朝 の 説 教
〈イエスの母・兄弟〉
『マルコ』3:31~35
1 はじめに・・・31節に「イエスの母と兄弟たちが来て外に立ち、人をやってイエスを呼ばせた」とあります。何のためでしょうか?
21節にあるように、イエスを取り押さえて家に連れ戻すためです。当時の指導者たちから「あなたたちの長男のイエスは気が変になっている」と告げられたからです。悲しい思いで訪ねてきた家族全員に対してイエス様は、「わたしの母、わたしの兄弟とはだれか」と答えました。これだけを見ると、イエスという人間は何と親不孝で冷たい人間なのだろうと思ってしまいます。
そうではありません!以下そのことを話したいと思います。
イエス様は、父ヨセフと母マリアの間に最初に生まれた子でした。その後、次々に弟や妹が与えられました。聖書に「この人(イエス)は大工ではないか。マリアの息子で、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか。姉妹たちは、ここで我々と一緒に住んでいるではないか」(『マルコ』6:3)とあります。30歳まで故郷のナザレで大工をしていたイエス様は、突然家を出て、家族と別れ神の子としての〈公生涯〉に入りました。突然の大転換のため、人々が理解できなかったのは無理もないことです。イエス様の人生は誤解と無理解の連続でした。自分が選んだ弟子たちからも理解されず、指導者たちからも、更には家族からも理解してもらえませんでした。でも、やがて弟子たちや家族から理解される日が来るのです。何と素敵なことでしょうか!
2 母マリアと弟ヤコブの回心
(1) 母マリアにとってはイエス様の誕生から理解できないことでした。許嫁のヨセフとは性的な関係をもたないのに妊娠・出産したからです。驚いたマリアでしたが、信仰深い彼女は「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身になりますように」(『ルカ』1:38)と受け入れました。30歳まで父ヨセフと大工の仕事を真面目にしていた息子の突然の家出と活動は、再び彼女を驚かせ不安にさせました。でも、母マリアは自分が産んだイエスが神の子であることを知るようになりました。イエス様は、十字架で殺される時十字架の上からこう声をかけています。
「イエスは、母とそのそばにいる愛する弟子とを見て、母に『婦人よ、御覧なさい。あなたの子です』と言われた。それから弟子に言われた。『見なさい。あなたの母です』。そのときから、この弟子(ヨハネ)はイエスの母を自分の家に引き取った」とあります。最後の最後まで母を愛し心配していたことが分かります。同時に母マリアがわが子イエスは神の子であることを悟っていたことが分かります。
(2) イエス様のすぐ下の弟はヤコブです。彼は長い間一緒に暮らしてきた兄イエスが神の子であるとは到底信じられませんでした。しかしイエス様が十字架で殺されたのを見、やがて復活のイエス様に出会い、兄イエスは神の子であり、メシア・キリストなのだと理解すことが出来ました。彼は後にエルサレム教会でイエス様の直弟子ペテロと同じ指導者になりましたし、聖書の後ろの方にある『ヤコブの手紙』の著者であろうと言われています。
このような劇的な変化があり、イエス様のお母さんも兄弟たちも、イエス様を信じる者に変えられたのです!何と素晴らしいことでしょうか!
3 本当の母、本当の兄弟とは
イエス様は家族を心から愛したお方でした。でも血が繋がっていなくても、同じ神を仰ぎ、イエスをキリストと信じるなら、お互いが本当の兄弟姉妹・母なのだと言っています。私は何度かアメリカの教会に行ったことがありますが、彼らは私を親しみを込めてファーストネームで「シュー!」と呼ぶか「ブラザー(兄弟)!」と呼んでくれました。肌の色が違い言葉が違っても同じイエス様をキリストと信じる時、血は繋がっていなくても兄弟姉妹と思ってくれるんだと胸が熱くなったことを覚えています。
皆さんがイエス様を「わたしの救い主」と受け入れる日がくるように祈る者であります。