新井秀校長説教集35~行いをもって誠実に愛し合おう~

2020年8月5日(水)
1学期 終業礼拝

-行いをもって誠実に愛し合おう-
『Ⅰヨハネ』3章16 節~18 節

長い一学期を終え終業の日を迎えることが出来ました。コロナ感染の拡大や大雨による被害など、大変な毎日でした。そんな中、君たちは良くルールを守り感染拡大を防いでくれました。協力に心から感謝します。明日から例年より短い夏休みです。目標をしっかり立てて、楽しい、でも充実した夏休みにしてください。特に3年生は自分の進路を決める重要な時です。悔いの無いように全力で自分の未来を切り開いていってください。

1~2年生は「培其根」(ばいきこん)、「その根を培う」、勉強でも部活でも資格取得でも、力を付ける絶好の時期です。自分を高める夏休みになるよう期待しています。

さて、先ほど読んでいただいた聖書の言葉について、私の感じていることを短く述べたいと思います。1学期の始業式でもこの言葉から話をしました。2・3年生は覚えていますか?こんな内容でした。「仏教には『無財の七施』という教えがある。お金を全く使わないで人に親切をする方法が7つもある。その4番目が『身施』(しんせ)。身体を使って親切をすることです。ドラえもんの声優だった大山のぶよさんは、小学生の頃、毎朝家の外の掃き掃除をしてから学校に行っていた。ある朝寝坊したのでお母さんに『今日は掃き掃除しないで学校に行っていい?』と聞くと、母は駄目だと言う、泣きべそをかきながら外に出ると何と道路が綺麗に掃除されている。となりの叔母さんがニコニコしながら「今日はおばちゃんがやっといたよ!早く学校に行きな!遅刻しないですむよ!」。これが身施、身体を使ってする親切だという話でした。

今日は私の受けた親切の一つを話します。大学2年の秋、私は1週間かけて青森から栃木県の小山までの約700キロを自転車で1週間かけて走りました。

高校の地理の教師になる夢はあったものの、中3で母を失ったショックから立ち直れずもがき苦しむ日々でした。何とかしようと荒療治です。自転車は3段変速のママチャリ。先に青森に駅留めで送り、私は「八甲田」という夜行急行で行きました。朝5時に着いたのに肝心の自転車が着いてないとのこと。やっと10時に自転車が着き、急いで目標の二戸への100キロを走りだしました。夕方辺りが暗くなり、小雨も降って来ました。まだ手前の三戸です。風邪を引いたら大変!咄嗟に「小学校を見つけて、庭にテントを張らせてもらおう。手洗い場もあるだろうし、水も使わせてもらおう」。幸い近くに小学校がありました。

でも校舎に明かりが点いています。誰かがいるのです。勝手にテントを張れば「不法侵入」と言われかも。恐る恐る挨拶に。「こんばんは!」中から若い先生が出て来ました。「二戸まで行って公園にテントを張って泊まらせてもらうつもりだったのですが、暗くなってきてしまい、雨も降ってきたので、今晩校庭の隅にテントを張らせてもらえませんか?また水も少し使わせてもらえませんか?」と頼みました。「いや私では答えられないから校長に聞いてきます」と。

やがて校長先生が玄関に現れ、「自転車で青森から栃木まで?大学生だって?テントをこれから張るのも大変だろう。保健室に小学生用の小さいベッドがあるからそこに寝たらどうだい?」と。「有難うございます!雨に濡れずに済みます」。

少しして校長先生。「君、お腹減ってないか?何か食いたいものある?奢ってやるよ!」。「え!本当ですか?いいんですか?じゃーカツ丼お願いします!」。どうもこの小学校では秋の運動会が無事終わり、校長先生は上機嫌だったようです。カツ丼をご馳走になった私は、疲れからあっという間に寝てしまいました。

翌朝早く目を覚ました私は、校門から校舎を振り返って深々と頭を下げ、「有難うございました!この御恩は一生忘れません!」と言って、次の目的地盛岡を目指して走り出しました。

ヨハネは「言葉や口先だけではなく、行いももって誠実に愛し合おう」と言っています。そしてその見本は何よりもイエス様の生き方にあると教えています。人から親切にされたら、人間、人に親切にしないではいられません。こうして幸せと喜びの輪が拡がるのです。皆さんも色んな親切を受けてきたことでしょう。今度は君たちが他人に親切にする番ですよ!