2020年9月10日(木)
朝 の 説 教
-大きな苦難を予告する-
『マルコ』13章14 節~23 節
『マルコ』13章は、良く「小黙示録」と呼ばれ、分かりにくい箇所です。キリスト教が当時のローマ権力やユダヤの指導者たちから非難され、迷惑がられていたために、わざと分かりにくい象徴的な表現をしたからです。でも13章全体でイエス様が伝えたかったことははっきりしています。それは、
- あなた方が私に従って生きようとする時、必ず大きな困難が待ち受けていること、
- でも、あなた方は決して一人きりではない。必ずわたしが聖霊となってあなたの傍にいること、
- だから、どんな困難の中にあっても信仰を守り通すように、と励ましていることです。昔も今もクリスチャンは少数派、マイノリティーです。今日でも、信仰を守って生きようとすれば周囲の抵抗や無言の圧力を感じます。また、しばしば孤独感や寂しさに襲われます。でも信仰の友は世界中におり、何よりイエス様が傍にいて下さる確信に支えられている者たちです。
いつの時代でも、権力者は全て自分に従わせようとします。自分に従わない者は殺されました。万里の長城を築いたことで有名な中国の秦の始皇帝は、「焚書坑儒」を行いました。自分への批判を封じるために、一部の実用書を除く一切の書物を焼き捨て、更に、自分に反抗する数百人の儒学者を穴埋めにしました。これが焚書坑儒です。ローマの皇帝ネロは良く「暴君ネロ」と呼ばれますが、ローマに自ら火を放って大火事を起こし、それをクリスチャンの責任にして、多くのクリスチャンを捕らえては、空腹の猛獣の餌食にしました。紀元64年の迫害で、パウロもペテロも殺されました。その時の様子は、小説『クオ・バディス』に描かれています。是非読んでください。ペテロがイエス様に「クオ・バディス・ドミネ」(主よ、どこへ行かれるのですか?)と聞く場面はとりわけ感動的です。
ローマ帝国は、皇帝ネロ以降もクリスチャン弾圧を激化させましたが、迫害すればするほど、彼らの勢いは増すばかりでした。クリスチャンは「カタコーム」と呼ばれる地下道で秘密の礼拝を持ち続け、暗号として魚の絵を用いてお互いを励まし合いました。「イエス・キリスト・神の・子・救い主」の信仰告白の5つの単語の最初の言葉を繋ぐと「イキトュス」(魚)になるからです。私もクリスチャンなので、車に魚のステッカーを貼り、「私もイエス様の弟子ですよ!」と発信しています。
イエス様の直弟子は12人でした。その内、イエス様を裏切って後に自殺したイスカリオテのユダ、イエス様の母マリアを自分の母として引き取ったヨハネを除く10人は、皆殺されています。殉教です。日本国憲法第20条に定められているように、本当に世界中で「信教の自由」が保証される時代になって欲しいと願う者です。
ところで、「小黙示録」と呼ばれる13章全体で最も重要な言葉は、10節の「しかし、まず、福音があらゆる民に宣べ伝えられねばならない」です。日本に初めてキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルも、アメリカから半年もの苦しい船旅をして来日したヘボンも、このイエス様の言葉に突き動かされて、死を覚悟して遠い日本に来て、人々にイエス様の愛の素晴らしさを説いたのでした。
最後に10節をもう一度読んで終わります。
「しかし、まず、福音があらゆる民に宣べ伝えられなければならない」。