新井秀校長説教集43〜使徒たちへの迫害〜

2020年11月12日(木)
朝 の 説 教
- 使徒たちへの迫害 -
『使徒』5章33節~42節

1 あらすじ・・・今日の話は、イエス様が復活なさり、弟子たちに聖霊が豊かに下った後のエルサレムの議会での出来事です。妬みに燃えて弟子たちを牢屋に閉じ込めた筈なのに、天使の助けで牢から脱出し、エルサレムの街中で堂々とイエス様の復活と愛を語っている弟子たちを、再度捕らえ、今度は殺してしまおうという場面です。自分たちの地位や権威が脅かされると知ると、人間は平気で殺人まで犯すのだと考えさせられてしまいます。
 その時です!民衆全体から尊敬されている律法の教師で、ファリサイ派に属するガマリエルという人が議場に立ち、使徒たちをしばらく外に出すように命じ、議員たちに言いました。38節以降です。「あの者たちから手を引きなさい。ほうっておくがよい。あの計画や行動が人間から出たものなら、自滅するだろうし、神から出たものであれば、彼らを滅ぼすことはできない。もしかしたら、諸君は神に逆らう者となるかもしれないのだ」と。この発言に圧倒された他の70名の国会議員たちは、ガマリエルの忠告に従い、弟子たちを釈放しました。

2 ガマリエルの行動について

ガマリエルは伝統ある律法学者の家に生まれ、自分も律法学者として多くの人から信頼され、尊敬を集め、名前の良く知られた国会議員でした。ガマリエルとは「神は私に良きことをした」という意味です。素晴らしい信仰的な名前です。彼の門下には青年パウロがいました。若き日のパウロは、律法学者として正義感に溢れてキリスト教徒を迫害しましたが、復活のイエス様に出会い、180度向きを変え、イエス様を信じる者に変えられ、世界中にイエス様の愛を伝える大伝道者になった人です。聖書には『ローマの信徒への手紙』など、パウロの書き残した手紙が数多く収録されています。

ガマリエルは、嘗て起こった「テウダの反乱」や「ユダの反乱」の事例を挙げ、この二つとも神によったものではなく、人間の欲望から起こったものだったので、いとも簡単に自滅してしまったことを皆に思い起こさせました。だから、イエスの弟子たちからは距離を置き、暫く放っておき、時間をかけて様子を見るべきだと忠告しました。

ガマリエルの行動についての評価は分かれます。ある牧師は「議会でのガマリエルの発言は穏健で、理性的であり、説得力のあるものだった。神の歴史的支配を確信する点も正統的信仰と合致する。しかし結局のところ、彼はイエスをキリストと信じる者を迫害こそしなかったが、自分は信じなかったのだ」と否定的見解を示しています。

別の牧師は、「ガマリエルは、他の70名もの国会議員を前に、勇気をもって立ち上がり、冷静かつ理論的に、忍耐をもって解決を時に委ねなさいと忠告した。とても勇気ある言動だと思う。伝説によれば、ガマリエルは後にイエス様を信じる者に変えられたと言う」と評価しています。

私は後者の見方が好きですし、きっとクリスチャンになったのではないかと想像します。70人もの同僚国会議員を相手に、唯一人立ち、堂々と意見を述べ、説得に成功し、弟子たちを死から救ったのですから、素晴らしいです!私はその男らしい勇気と決断力に感動を禁じ得ない者であります。

ガマリエルの回心と言い、パウロの一大転換と言い、全く神の為せる業、愛と導きであります。ガマリエルの名前の意味する通り、「神はわたし(ガマリエル)に良きことをした」のであります。