2023年4 月18日(火)
朝 の 説 教
- ヘロデ大王による幼児殺害 -『マタイ』2:16~18
今日の聖書には、「ヘロデ、子供を皆殺しにする」との題が付けられていて、大変ショッキングです。どうしてこんな惨たらしいことをするんでしょうか?今日はヘロデの人生から、いくつかのことを学びたいと思います。
1 ヘロデは「ヘロデ大王」とも呼ばれ、イエス様が十字架で殺された時の息子のヘロデ・アンティパスの父親です。彼は有能な領主で、エルサレム神殿の大規模な改修工事をしたり、荒廃していたサマリアの街を復興したりしました。特に土木建築事業に大きな成果を残しました。
2 ただ彼の心には人には言えない悩みがありました。それは彼にはエドム人の血が混じっていたことです。私たちは日本人と外国人の混血は悪いなどとは思ってもいません。でも生粋のユダヤ人には、自分たちは神様から特別に選ばれた民族だという「選民意識」があり、何か自分たちだけが神様から特別に愛され、特別に優秀な民族だという誤った考えをもっていました。旧約聖書に、「もし外国人の血が入ったら10代は元に戻らない、清くならない」とまで書かれている位です。ヘロデは領主の権力を使って自分の系図を書き換えさせたとさえ言われています。ヘロデはしばしばこのことで陰口をたたかれたらしく、生粋のユダヤ人への憎しみ・敵意は相当なものでした。
3 更にヘロデは極端に猜疑心の強い人間でした。自分の位を奪いそうな人間がいれば容赦なく殺しました。苦労してやっと手に入れたユダヤ人最高の地位です。自分の上に立つローマの総督ともうまくやっていました。そうして得た領主の地位は絶対に手放したくないものでした。ヘロデは、10人もの妻の中で最も愛したマリアンネまで殺してしまいました。ヘロデは死ぬまで、自分が殺したマリアンネのことを思い出しては泣き悲しんだと言われています。それだけではありません。長男を初めとする3人の息子たちを殺し、義理の父を殺しました。何と言う悲劇でしょうか!自分に身近な者が皆自分の地位を狙っていると疑い、次々と殺したのです。
私はどんな人間にも「良心」があると思っています。殺しても殺しても、ヘロデの心は平安になったどころか、不安と恐怖が増していった筈です。彼は70歳でエリコと言う町で死んだのですが、悪病に罹り、悶え苦しんで死んでいったそうです。
幸い幼子イエスと父ヨセフ・母マリアはエジプトに逃れて無事でした。暫くしてヘロデは亡くなり、夢で「この子の命をねらっていた者どもは、死んでしまった。起きて、子供とその母親を連れ、イスラエルの地に行きなさい」との命を受け、一家は故郷のナザレに戻りました。
皆さんは今日の聖書から、「ヘロデ大王という人間は何て自分勝手な酷い人間なんだろう!」と思ったことでしょう。その通りです。でも、今に生きる私たちの心の中にも、「邪魔者は殺してしまえ!」と身勝手な醜い考えがあるとは思いませんか?
ヘロデ大王は自分の地位を奪いかねないイエスを探し出して殺したいと思いましたが出来ませんでした。でもそれをしたのはイエス様と同じユダヤ人の、しかも皆から尊敬を集めていた指導者たちでした。彼らもイエス様が邪魔者だったのです。放っておけば自分たちの身分や地位が危ういと思ったのです。イエス様の人望に激しい妬みを感じていました。だからイエス様を捕らえて十字架で殺したのです。今に生きる私たちも、しそうなことです。
クラスの中に虐めはありませんか?部活の中に虐めはありませんか?虐めは今日のヘロデ大王の考え方に近いです。自分に邪魔な人間、嫌な人間ならどんなことでもするなら、ヘロデ的生き方です。そんな考え方は私たちの学校からは全てなくしましょう。幼子の命を必死に守り通した父ヨセフや母マリアのような、愛に満ちた生き方を見習いましょう。今日の聖書から、私はそのことを教えられました。