甲子園日記 8月21日
赤堀颯、魂の叫び。「みんなと同じ涙を流せたことが一番嬉しい。これからの聖光学院のために、夏の甲子園で勝つチーム、そういう血液をチームに持ち帰ると決めてやってきた。(三好)元気、(髙中)一樹、(杉山)由朗、(小松)桜吏、お前たちの代に必ず日本一の聖光学院にしてくれ!今までみんな、ありがとう!」
甲子園から寄宿後、赤堀が選手間ミーティングで短くも、熱く涙ながらに語った言葉。文字にするのがもったいないほどの魂の叫び。赤堀颯の、そして聖光学院野球部59期生の生き様が凝縮された叫びに、我々も込み上げてくるものを抑えることができませんでした。
このチームは日本一になることを公言し歩んできた世代です。頂点になれるのは3782校3547チーム中のたった1校。当然そこを狙える力を最初から有していたわけではありません。それどころか、戦力的にはスタート段階において過去のチームと比較しても下位。全国ベスト4の結果に一番驚いているのは実は我々スタッフです。
準決勝。序盤から失点を重ねる苦しい試合。しかし選手は少しも諦めませんでした。佐山は球数制限の142球に迫る130球を投じ、赤堀、生田目、安田はことごとく球際の強さを発揮。私は、試合中にも関わらず目頭を押さえるのに必死でした。なぜなら、彼らの圧倒的な努力を知っているからです。生田目は決して身体能力に優れた選手ではありません。1年生の時遊撃手だった生田目は、練習試合で勝敗には全く関係ない場面で雑にボールを扱い、失策を侵して交代を命じました。その時彼はベンチで悔し涙を流しました。そこから、彼は1球の重みを求めてノックを受け続けました。赤堀は外野手から遊撃手へコンバートした選手。最初は足が止まり、何度も何度も試合で失策を重ね、涙を流しました。安田は実は不器用で、打撃練習で全くうまくいかず、悩みに悩んできました。しかし彼はバットを振り続け、いつも自分の前に立ちはだかる壁に挑んできました。九州学院戦のピンチで一塁線を抜けそうな当たりを好捕した伊藤。1年生の時、ファーストにボールが飛んだら目を覆うしかないほどの守備力しかありませんでした。最終回に代打で内野安打を放った三田寺、彼もまた努力に努力を重ねて這い上がった男。三年間のすべての歩みが凝縮された見事な内野安打でした。去年の夏、最後のバッターとなった山浅もまた、苦難から這い上がってプロも注目するような選手に成長しました。できれば全選手の名前をここで挙げてあげたい…。そう思う選手たちです。
赤堀が言った「みんなと同じ涙」の意味。本当に重い。「同じ涙」を流すために、彼は自分の愛情のすべてをチームに、仲間に注いできました。仲間はそれに応え、最弱と言われた世代が成長に成長を重ねて、新しい歴史を刻み込んでくれました。
感謝。素晴らしい選手たちとの出逢い。勝ち負け以上に大きな大きな財産を残してくれた選手たちに、心からの「ありがとう」を伝えたい、そう思います。
そして、この夏、多くの方々にご支援、ご声援を頂きましたことに、この場をお借りしまして深く御礼申し上げます。また、朝日新聞社福島支局様のご依頼で、本校野球部の活動の様子を寄稿する場を頂いたことにも心から感謝申し上げます。選手たちの躍進の裏側が、不断の努力、真摯な姿勢が少しでもお伝えできたなら幸いです。2022年の「夏」が終わります。聖光学院は赤堀世代の魂を引き継ぎ、新チームを始動します。
最後に、皆様方には本校野球部同様、コロナ禍にも負けず、日々努力を重ねる福島県の高校球児に温かいご声援をよろしくお願い致します。長期間にわたり、ありがとうございました。