野球部「2023 夏甲子園日記」第2回 難が有って有難う

甲子園日記 第2回 8月2日

「あの劣勢の状況下にあって、なぜあんなに素晴らしい表情でいられたのですか?」と複数の方に聞かれました。私も決勝戦の映像を見返しましたが、確かに主将の髙中一樹を筆頭に苦しい試合展開を楽しんでいるかのような表情にさえみえます。

「難が有って、有難う」。そんな聖光学院の教えが根付いているのかも知れません。普通「ありがとう」は自分に都合のいいことが起きた時に発する言葉ですよね。でも、チーム作りがうまくいかなかったり、なかなか結果が出ない時、選手は一様に表情が曇り、暗い顔をします。

そんな時、私たちはこんなミーティングをします。「自分の都合のいい事ばかりにありがとう、というのは簡単だ。でも、自分にとって不都合な事が起きた時に、いかに心から感謝できるか。これは自分が成長するために絶対必要な不都合であり、これがあるから成長できるんだ。難が有って有難う、なんだよ」。そして「難がないことを“無難”という。お前たちの夢は大きい。無難な毎日を送っていて、その夢に届くはずがないだろう?」と。自分にとって不都合な事から目をそらさず、逆に感謝してそれを受け入れ立ち向かっていく。聖光学院の選手は3年間の歩みの中で、そういう考え方ができるようになってくるのだと思います。だからこその決勝戦の選手たちの表情なのだと思います。きっと選手たちは、あの展開にも「有難う」という「感謝」の気持ちを忘れていなかったのだと確信します。

そして今日、選手たちが甲子園見学で聖地に足を踏み入れました。実際のプレーはできませんでしたが、各ポジションや打席に立ち、甲子園の風景を体感できました。昨年はコロナ禍でそれもできなかったので、こういう機会が得られたことに感謝したいと思います。

明日は抽選会があり対戦相手が決まります。そして6日からいよいよ大会が始まります。試合展開は予想できませんが、どんな展開になっても選手たちは心に「有難う」を含んで、戦いきってくれるものと信じます!

※「有難う」を調べると・・・
ありがとうは、形容詞「有り難し(ありがたし)」の連用形「有り難く(ありがたく)」がウ音便化した語である。
「有り難し」は、「有ること」が「難い(かたい)」という意味で、本来は「滅多にない」や「珍しくて貴重だ」という意味。

とありますので、「難が有って、有難う」は本来の意味ではありませんが、苦境に負けない強い人間になって欲しい、そういう時こそ感謝の心をもって事にあたって欲しいと思い、選手たちに話しています。