1999年9月、斎藤智也先生が監督に就任し、コンビを組むようになりました。その時に話したことがあります。「スカウティングに走ることなく、生徒ととことん向き合って、選手を集める学校ではなく、選手が集まる魅力的な野球部にしよう」ということでした。それから24年。長年ブレずにチーム作りをしてきました。
「どうしても聖光で野球がやりたい」と3年前、東京出身の木村元気選手が聖光学院のグランドにやってきました。しかし時期も非常に遅く、既に寮に入れる枠もなかったため、断るしかありませんでした。体も小さく華奢。でもその意志は誰よりも固く、大きいものでいた。寮に入れないのなら、とここでひと肌(それどころじゃない程の決断ですが)脱いだのが木村選手のお姉さん。高校時代都立高校の硬式野球部で男子生徒に混ざって練習をしていたというお姉さんは、「弟の夢」を叶えるためにと、なんと東京での仕事を辞め、木村選手のサポートをしながら福島で一緒に生活するので、何としても野球部に入れて欲しい、と申し出があったのです。もうこれには私たちも感動。もちろん断る理由もなく、彼は入学試験に合格し、「自宅生」として野球部に入部をしたのです。入部後は類まれな、といってもいいほど献身的で誰にでも公平に接することのできる人間性は素晴らしく、マネジャー兼任プレーヤーとして欠かせない選手に成長してくれました。選手一人ひとりにはそういった背景があり、ストーリーがあります。各選手とも、これまでお世話になった大切な人のためにも、全力を尽くして戦って欲しいと思います。
練習はいよいよスイッチが入ってきたな、という雰囲気。できる限りの準備をして、次戦に挑みます。